本研究の目的は、水チャネル、アクアポリン2(AQP2)の細胞内と頂部細胞膜との間の細胞内移送について、その経路および調節機構を明らかにすることにある。15年度の研究では、AQP2を安定的に発現させたMDCK培養細胞で、フォースコリン添加によりAQP2が細胞内から頂部細胞膜へと移行し、フォースコリン除去で再び細胞内に移行することが確認された。16年度はこの培養細胞系を用いて、AQP2の細胞内分布と、頂部細胞膜から細胞内へのAQP2のリサイクリングの過程を詳細に検討した。細胞極性を形成していない状態のMDCK細胞では、AQP2は細胞内に分散していて、その一部は初期エンドソームのマーカー分子であるEEA1の近傍に分布した。このことはAQP2の細胞内移送にエンドソーム系が関与することを示唆した。MDCK細胞をコンフルエントの状態で培養し、細胞極性を形成させるとAQP2は頂部細胞膜直下に分布し、その一部はリサイクリングコンパートメントのマーカー分子であるRab11と共存した。頂部細胞膜直下に分布するAQP2は、フォースコリンの添加により、頂部細胞膜へと移行した。その後、フォースコリン除去でAQP2はエンドサイトーシスにより細胞内へと移行するが、その際に、初期エンドソームを通過して、頂部細胞膜直下のAQP2貯蔵部位に戻ることがわかった。ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3キナーゼ)の阻害剤であるワートマニンやLY294002によって初期エンドソームからの移送が阻害されることもわかった。これらの結果から、AQP2はリサイクリングコンパートメントに分布し、エンドソーム系を介してPI3キナーゼ依存的にリサイクリングすることが示唆された。 16年度は、他のアクアポリンアイソフォームであるAQP1、AQP3の組織分布についても発表した。
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