研究概要 |
本研究の目的は、筋細胞に特異的に発現するカベオリン3からなるカベオラと、多くの細胞に発現するカベオリン1,2からなるカベオラについて、その形成機構と分子組成の両面を比較、解析することによって、カベオラの生理的機能への理解を深めることである。 1.平滑筋組織におけるカベオリン1,3の発現の組織学的解析 マウスの種々の平滑筋組織におけるカベオリン1,3の発現を免疫組織化学法により解析した結果、カベオリン1はすべての平滑筋細胞で発現が見られたが、カベオリン3は、消化管の縦走筋、子宮平滑筋、血管平滑筋などで発現が見られなかった。文献によると、これらの平滑筋には自律神経支配の形態学的特徴に共通点が見られる。この結果は、カベオリン3の発現と自律神経支配の様式の関連を初めて示唆するものであり、平滑筋におけるカベオリン3の機能を解明する上で重要な手がかりになると考えている。今後さらに免疫電顕法により単一のカベオラ内にすべてのタイプのカベオリンが存在するのか、カベオリン3からなるカベオラとカベオリン1,2からなるカベオラは別個に存在するのかを明らかにする予定である。 2.培養筋細胞を用いたカベオリンファミリー遺伝子の発現調節機構の解析 培養筋芽細胞C2C12の筋細胞への分化に伴うカベオリンファミリー遺伝子の発現を解析し、カベオリン3の発現増加と同時に、カベオリン1の発現が抑制されることを明らかにした。さらにこの現象の分子基盤を明らかにするために、カベオリン1遺伝子の転写開始点の上流1.3kbとカベオリン3遺伝子の転写開始点の上流1.8kbを用いてプロモーターアッセイを行った。しかし現在のところ、転写調節に重要なシスエレメントの同定には至っていない。今後は両遺伝子についてさらに広範囲にわたって転写調節領域の解析を行い、筋細胞におけるカベオリンファミリー遺伝子の発現調節機構を明らかにしたい。
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