1.Six1遺伝子欠損マウスの表現型の解析 Six1遺伝子欠損マウスは内耳、鼻腔、腎臓および胸腺の無形成あるいは著しい低形成を示し出生直後に死亡した。内耳では半規管と内リンパ管の一部を除く大部分を欠損し、既に12.5日胚で蝸牛管と前庭部分を欠いていた。105日胚では内耳原基である耳胞の形態的異常は軽微であったがin situハイブリッド形成法を用いた解析の結果、Dach1、Dach2、Dlx5など耳胞の背側部分のマーカー遺伝子の発現が腹側に拡大し、一方Otx1、Otx2、LFng、Fgf3など耳胞の腹側部分のマーカー遺伝子の発現が消失ないし減少していた。これによりSix1はこれら遺伝子の耳胞における領域特異的発現を制御していることが明らかとなった。 2.Six4/Six5両遺伝子欠損マウスの表現型の解析 以前よりSix4/Six5両遺伝子欠損マウスは出生直後の死亡率が有意に高く、さらに生き残った個体では耳介が小さくなる傾向があることを見い出していた。C57/BL6系統への戻し交配を進めた結果、Six4/Six5両遺伝子欠損マウスの生存個体を得られなくなり、胚性致死の可能性が考えられた。 3.Six1/Six4両遺伝子欠損マウスの作製 Six1とSix4は同一染色体上に隣接して存在することから遺伝子欠損マウスを交配してSix1/Six4両遺伝子欠損マウスを得ることができないため、Six4遺伝子欠損マウスの作製時に用いた胚性幹細胞(ES細胞)にSix1遺伝子ターゲットベクターを導入し、同一染色体上でSix1とSix4が破壊されたES細胞クローンを選択した。これを用いて作製したキメラマウスからこのES細胞クローンに由来する仔を得た。現在、繁殖によるコロニーの拡大を行っている。
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