研究概要 |
1.Six4/Six5両遺伝子欠損マウスの解析 Six4/Six5両遺伝子欠損マウスは出生直後の死亡率が有意に高く、生存個体では耳介が小さくなる傾向があった。純系マウスへの戻し交配を進めるに従っで生存個体を得られなくなった。しかし耳介を含めた形態異常は僅かでかつばらつくことから、戻し交配を継続した。 2.Six1遺伝子欠損マウスの解析 Six1遺伝子欠損マウスは内耳、鼻腔、腎臓、胸腺および骨格筋の無形成あるいは著しい低形成を示し出生直後に死亡した。特に内耳ではその原基である耳胞の背側部分に由来する内リンパ管や三半規管の一部が残存し、腹側部分に由来する蝸牛管等が欠損していた。これと対応して、耳胞背側で発現するDlx5、Hmx3、Dach1、Dach2などの発現領域は腹側へ拡大し、耳胞腹側で発現するOtx1、Otx2、Lfng, Fgf3などの発現は消失していた。従ってSix1はこれら多数の遺伝子の耳胞における発現パターンを制御する重要な遺伝子であることを明らかにした。またSix1遺伝子欠損胚の耳胞では細胞増殖の低下とアポトーシスの亢進が観察され、Six1が細胞増殖・細胞死の制御に関わっている可能性も示した。 3.Six1/Six4両遺伝子欠損マウスの解析 Six1/Six4両遺伝子欠損マウスは出生直後に死亡し、形態異常はSix1遺伝子欠損マウスの場合よりも重篤化かつ早期化していた。耳胞は形成されるものの小さく、やがて完全に消失した。耳プラコードからの陥入が遅れており、この時期に細胞増殖の低下とアポトーシスの亢進が認められた。、鼻プラコードは形成されるものの陥入しないまま消失した。腎臓形成においては尿管芽の出芽が認められなかった。Six4欠損マウスは明らかな異常を示さなかったが、Six1/Six4両遺伝子欠損マウスの解析からSix4が内耳、鼻腔、腎臓などの形成に関わっていることを明瞭に示した。
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