われわれは、さまざまな内分泌細胞を特異的に認識する抗体を見い出し、この抗原タンパク質をmulti-endocrine cellular antigen (MECA)と便宜上命名し、研究を進めている。昨年度は、MECAの候補タンパク質の遺伝子を得るために、ラット視床下部のcDNAライブラリーからイムノスクリーニングを行い、新規のHECT型E3ユビキチンリガーゼのcDNA断片を得た。本年度はこの分子の解析を続行した。 1.このタンパク質は全長約2600アミノ酸から構成され、C末側のHECTドメイン以外にも、ARMリピート、アンキリンリピート、Mib/herc2ドメインなどを持っていた。データベースによる解析では、ヒトからセンチュウにいたる動物種では保存されているが、酵母や植物には存在しないことが予想された。 2.C末側の約1500アミノ酸をカバーする10種類のcDNA断片をクローニングし、これらから4種類のGST-融合リコンビナント・タンパク質を設計し作製した。リコンビナント・タンパク質、およびC末端部分の合成ペプチドを抗原としたウサギの抗血清を作製した。 3.ペプチド抗体では、視床下部の室傍核と視索上核、下垂体の後葉が強く染色された。二重染色によりこのシグナルはバゾプレシン(ニューロフィジン2)とほぼ一致した。他の臓器では強いシグナルは見られなかった。下垂体におけるイムノブロットでは、予想される分子量に相当する約300kDaのバンドが確認できた。この分子はオキシトシン・ニューロンには見られず、バゾプレシン・ニューロンにのみ陽性な点から、両ニューロンの異なる性質を反映する分子であると考えられる。
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