嗅上皮における薬物代謝第三相(多剤耐性関連タンパク)による異物排出機構

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14770012
• 研究機関: 産業医科大学
• 研究代表者: 工藤 秀明 産業医科大学, 医学部, 講師 (40289575)
• キーワード: 嗅上皮 / 多剤耐性関連タンパク / 薬物代謝 / 免疫組織化学 / in situハイブリダイゼーション / PCR / 支持細胞 / 嗅細胞

研究概要

平成14年度の研究実施計画に沿って、1)Wistar系正常雄性アルビノラット嗅上皮から調整したpoly(A)^+RNAを鋳型とした、多剤耐性関連タンパク(multidrug resistance-related protein ; MRP)の主要アイソフォームであるMRP1およびMRP2遺伝子発現の検出を、特異プライマーを用いたRT-PCR法により試みた。その結果、MRP1に対するcDNA断片が特異的に増幅され、その発現が確認されたが、MRP2については全く検出されなかった。2)1)で得られたMRP1cDNA断片をもとにジゴキシゲニン標識cRNAプローブを作製し、同ラット嗅上皮のパラフィン包埋切片に対してin situハイブリダイゼーションを施行した結果、支持細胞および嗅細胞の核周囲部にmRNA発現を示すシグナルが見とめられたが、基底細胞および呼吸部の構成細胞には発現は認められなかった。3)MRP1に対するポリクローナル抗体と高分子アミノ酸ポリマーを利用した間接酵素抗体法による免疫組織化学的解析を施行した結果、支持細胞核上位部と嗅細胞周囲に免疫陽性反応が認められ、特に嗅細胞周囲の免疫陽性反応はパッチ状の反応産物として観察された。以上の結果から、正常ラット嗅上皮において、薬物代謝第III相に関わるMRPのアイソフォームのうちMRP1が支持細胞および嗅細胞に発現していることが明らかとなった。
次年度は、免疫電顕法でMRPの細胞内局在を解析するとともに、人工化学物質曝露ラット実験モデルを作製し、MRP発現の亢進の有無を遺伝子およびタンパクレベルで検索する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Soichiro Nara, 他(第5著者): "Disorganization of honey-comb immunoreactive pattern of desmin and plectin in rat atrophic soleus muscle fiber induced by hindlimb suspension"Histology and Histopathology. 17(2). 427-436 (2002)
• [文献書誌] Takayuki Ota, 他(第5著者): "Expression of monocyte chemoattractant protein-1 in proximal tubular epithelial cells in a rat model of progressive kidney failure"Journal of Laboratory and Clinical Medicine. 140(1). 43-51 (2002)
• [文献書誌] Yoshiaki Doi, 他(第2著者): "Enhancement of immunoreactivity for endothelin-1 and endothelin-converting enzyme-1 in the cadmium-treated rat thoracic aorta"Virchows Archiv. 441(2). 179-186 (2002)
• [文献書誌] Kazuhiko Mochida, 他(第3著者): "Molecular cloning and immunohistochemical localization of ubiquitin C-Terminal hydrolase expressed in testis of a teleost, the Nile Tilapia, Oreochromis niloticus"Journal of Experimental Zoology. 293(4). 368-383 (2002)
• [文献書誌] Miyako Morita, 他(第2著者): "Enhanced immunocytochemical expression of antioxidant enzymes in rat submandibular gland after normobaric oxygenation"The Anatomical Record. 268(4). 371-380 (2002)