平成15年度の研究実施計画に沿って、Wistar系正常雄性アルビノラット嗅上皮での発現が確認された多剤耐性関連タンパク(multidrug resistace-related protein ; MRP)のアイソフォームの1つであるMRP1に着目し、1)MRP1の全翻訳領域を含むcDNAをラット嗅上皮poly(A)^+RNAを鋳型としたRT-PCRにより得て、TA-cloning法によりプラスミドベクターに挿入した。その遺伝子配列のシークエンスを解析した結果、ラット肝で報告されているMRP1遺伝子配列と全く一致していた。これまで薬物代謝酵素の一部については嗅上皮特異のアイソフォームが報告されているが、MRP1については他臓器と同じものが発現・機能していることが明らかとなった。 2)前年度作製したジゴキシゲニン標識cRNAプローブによるin situハイブリダイゼーションと特異性が確認された抗MRP1ポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学を嗅粘膜のミラー切片においてそれぞれ施行した結果、嗅上皮の支持細胞と嗅細胞の核周近部にmRNA発現を示すシグナルが認められ、支持細胞核上位部細胞質と嗅細胞核周辺部の細胞膜の一部にタンパクの局在を示す免疫陽性反応が観察された。しかしながら、嗅粘膜呼吸部の構成細胞には遺伝子およびタンパクともに検出不能であった。3)嗅上皮におけるより詳細な細胞内局在を見るために免疫金法による免疫電顕を試みたが、使用した抗体がマイクロウェーブによる抗原賦活化が必要なことに起因して良好な結果は得るれていない。4)遺伝子導入実験については、発現ベクターの設計と実験装置の整備までが完了した。 次年度は、免疫電顕法の改良によるMRP1の細胞内局在の把握、人工化学物質曝露実験によるMRP1発現の解析、およびMRP1遺伝子導入実験を進める予定である。
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