未分化のES細胞を白血病阻害因子存在下で継代培養し、未分化ES細胞からembryonic bodyを作成した。作成したembryonic bodyを5-6日後にゼラチンによりコーティングした培養皿に付着させて、顕微鏡にて観察した。培養皿に付着したES細胞の一部に自己拍動能を有する細胞群が観察された。その細胞が心筋細胞に分化したES細胞である可能性が高いと考えられる。 また、心筋梗塞ラットの作成、ES細胞由来心筋細胞をラットの心臓に移植する際に開胸手術が必要である。それ故、まず開胸手術のラットの心臓への影響を検討するため、開胸手術のみを行ったのち2週間後に再度開胸し、心臓の様子を肉眼で観察した。例数は少ないが、癒着などは特に見られなかった。 さらに、ラット血液交叉灌流法により心力学的エネルギー学的な心機能解析を行っている。まず、心筋梗塞心、ES細胞由来心筋細胞移植を行った心臓と正常心の心機能を比較検討するため、正常ラット心を摘出し、血液交叉灌流を行い、心収縮期末圧容積関係、弛緩期末圧容積関係、さらに収縮期末圧容積面積(PVA)、一心拍ごとの心筋酸素消費量(Vo_2)を求めた。また単位心収縮性変化当たりの酸素消費の指標である収縮性の酸素コストを調べるため、アドレナリン受容体アゴニストであるdobutamineを冠動脈から注入し、収縮性を変化させた。摘出心臓の左心室の容積を一定に保ち、dobutamineの注入速度を段階的に上昇させると、Vo_2-PVA関係は右上方へ移動した。現在、開胸手術のみを行ったラットの心臓を対照群として心力学的エネルギー学的に検討しているところである。今後、細胞移植を行ったラットの心臓についても同様に検討を行う予定である。
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