未分化ES細胞からembryonic bodyを作成し、それを培養皿に付着させて、顕微鏡にて観察したところ、培養皿に付着したES細胞の一部に自己拍動能を有する細胞群が観察された。そのことから、ES細胞から心筋細胞に分化した細胞が一部存在する可能性が高いと考えた。培養皿に付着したES細胞から分化した心筋細胞を純化し、培養心筋細胞のシートを作製することを試みたが、分化した心筋細胞のみを分離することは困難であった。そこで、embryonic bodyを破壊せずにそのままの状態で直接移植することを試みた。より未分化な状態でES細胞を心臓に移植することにより、移植した後にES細胞が心筋細胞に分化するのではないかと考えたからである。 hanging drop作成後5-6日目のembryonic bodyをラット左心室心筋へ注入した。注入方法としては細胞移植でなされている方法と同様に、embryonic bodyを液体とともに注射器に吸い取った後、注射針を左心室自由壁に刺して、注入することを検討した。 embryonic bodyは細胞同士が集合した細胞塊なので、細胞よりも大きい。そこで、まずembryonic bodyが通過することができる注射針の直径を検討した。embryonic bodyを破壊せずに注入するには25G以上の太さの注射針を使わなければならないことがわかった。しかし、embryonic bodyを液体とともに注射器から押し出し左心室に注入した後に注射針を左心室から抜くと、注入した液体が逆流してきた。そのため、単純に注射器にembryonic bodyを含んだ液体を入れ、それを注入するという方法ではembryonic bodyの移植は困難であることが明らかとなった。今後、embryonic bodyの移植法について、さらなる検討が必要であると思われる。
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