研究概要 |
組織深部の観察に適する2光子励起断層画像法と水溶性蛍光色素液を用いて、膵ランゲルハンス島におけるインスリンの開口放出を定量的に検出する手法を確立した。(Takahashi et al. Science297,2002)そこで、本研究課題ではこの手法の同時多重染色性を用いて、開口放出にかかわる蛋白の動態を実際の開口放出現象と関連付けて解析することを目的とした。 まず、膜融合に深く関連するSNARE蛋白質のうち、細胞膜に存在するSNAP25の動態を調査した。SNAP25のN末を、GFPの変異体であるECFPで標識し、アデノウィルスベクターでラット膵島に発現させた。水溶性蛍光色素液で膵島を還流しながら、高濃度グルコースで分泌刺激を与え、開口放出がおこった部位における当分子の動態を解析した。その結果、融合細孔を介して顆粒膜に側方拡散する頻度は、単一開口放出現象では5%であるのに対し、逐次開口放出を起こした例では54%に達した。なお、膵島では逐次開口放出が全開口放出現象の2%に著しく抑制されている特徴を我々は発見したが、膜性SNARE蛋白の顆粒膜への拡散障害がその抑制の主因になっているとする仮説を打ち出した。膜内コレステロールの除去により、拡散と逐次開口放出双方の出現頻度が増えることを確認し、両者の間の相関が示唆された。この研究により顆粒膜にSNARE分子が側方拡散を開始するタイミングや、側方拡散したのちに第二の開口放出がおこるまでに潜時などが明らかになった。(論文投稿中)
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