平成14年度において我々は、細胞刺激時に様々な蛋白質がチロシンリン酸化されることに着目し、TRPC6がチロシンリン酸化による活性制御を受けることを明らかにしたので報告する。 我々は、TRPC6を発現させたCOS細胞にEGF刺激を与えると、TRPC6が1分以内にチロシンリン酸化されることを見いだした。このTRPC6のチロシンリン酸化は、Src型チロシンキナーゼの阻害剤により検出されなくなることから、EGF受容体の下流に存在するSrc型チロシンキナーゼがTRPC6をリン酸化していることが示唆された。実際、試験管内でSrc型チロシンキナーゼの一つであるFynがTRPC6をリン酸化すること、また活性化型のFynをTRPC6とCOS細胞に共発現させるとTRPC6のチロシンリン酸化が検出されることから、FynがTRPC6を直接リン酸化すると結論した。また、免疫沈降法により、TRPC6がFynと結合すること、またこの複合体はcaveolinを含んだsignaling complexであることを明らかにした。さらにTRPC6とFynの相互作用は、FynのSH2領域とTRPC6のN末端細胞内領域によるものであることを明らかにした。 次に、FynがTRPC6のチャネル活性に与える影響をSingle channel recording法を用いて解析した。その結果、Fynは、ATP存在下においてTRPC6のチャネル活性を上昇させることを明らかにした。一方、ATP非存在下では、TRPC6のチャネル活性に影響はみられなかった。また、熱変性したFynやATPのみでも、TRPC6のチャネル活性に影響はみられなかった。以上のことから、FynはTRPC6をチロシンリン酸化することにより、そのチャネル活性を上昇させることが明らかとなった。
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