運動ストレス時に分泌が亢進するプロラクチンの生理作用を明らかにするため、遺伝子改変により作製したプロラクチンノックアウトマウスを用いて検討した。 水泳運動によるマクロファージ走化性の亢進 先行研究より、運動ストレスは血中プロラクチン濃度の上昇を介して、腹腔内マクロファージの走化性を高めることが報告されている。本研究では水泳運動をマウスに負荷し、その効果を検討した。その結果、20分間の水泳運動は、ヘテロ欠損マウスおよびホモ欠損マウスの腹腔内マクロファージの走化性を同程度亢進させた。また、非運動群のマクロファージ走化性も、ヘテロ欠損マウスおよびホモ欠損マウス間に有意な差は認められなかった。以上の結果より、プロラクチンノックアウトマウスにおける腹腔内マクロファージの走化性亢進は、プロラクチン以外の因子によって補償されていると考えられた。 プロラクチン受容体遺伝子発現レベルの検討 プロラクチン受容体(PRLR)は全身の組織に発現しており、特に肝臓と腎臓における発現が高く、雄よりも雌で高いことが知られている。プロラクチンホモ欠損マウスとヘテロ欠損マウスのPRLR発現量(Long formおよびShort form)を比較したところ、肝臓および腎臓のいずれにおいても有意な差は認められなかった。また、20分間の水泳運動を負荷してもPRLR発現量の変化はなかった。心臓と脂肪組織のPRLR発現量には、雌雄差が見られず、ホモ欠損および水泳運動の影響も認められなかった。以上の結果より、PRLRの発現は血中プロラクチン濃度により調節されているのではなく、肝臓や腎臓では性ホルモンの影響が考えられた。一方、心臓および脂肪組織では、プロラクチン、性ホルモンのいずれの影響も受けていないことが示唆され、その発現調節機構の解明にはさらなる研究が必要である。
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