本研究では、低ナトリウム血症の状態において腎臓ではどのような適応がなされているか検討するものであり、日常医学現場においてよく遭遇する低ナトリウム血症での生体の状態における加療などの一助になることを目的としている。まず、無ナトリウム食負荷による腎髄質でのバゾプレッシンV2受容体の遺伝子発現の変化について検討を行った。 (1)ラットに無ナトリウム食(Na<0.005%)負荷を七日間行った。血液中のナトリウムはやや低下するも浸透圧は変化無く、総蛋白濃度の増加より体液量の減少が考察された。この状態において腎臓髄質のバゾプレッシンV2受容体の遺伝子発現量は増加していた(無ナトリウム食;152±18%、普通食;100±9%)。 (2)このラット腎臓髄質のバゾプレッシンV2受容体の遺伝子発現量の増加は、腎臓におけるナトリウム排泄がほぼ0に到達していた無ナトリウム食(Na<0.005%)負荷四日目には認められた(0日;100±17%、2日;99±10%、4日;134±1%、7日;153±11%)。 (3)レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系の関与について検討するため、ラットに無ナトリウム食(Na<0.005%)負荷を七日間行うと同時に、皮下に埋め込んだ浸透圧ミニポンプによりアンギオテンシンAT1受容体アンタゴニスト(ロサルタン)を投与した。路サルタン単独投与においては腎臓髄質のバゾプレッシンV2受容体の遺伝子発現量は有為な変化を示さなかった。しかし、無ナトリウム食(Na<0.005%)負荷による腎臓髄質のバゾプレッシンV2受容体の遺伝子発現量の増加はロサルタンにより逆に減少傾向となった(普通食のみ;100±8%、ロサルタンのみ;97±13%、無ナトリウム食のみ;164±10%、無ナトリウム食とロサルタン;66±8%)。今後更に検討を加える予定である。
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