1)ラット結腸平滑筋における共焦点レーザー顕微鏡3重染色観察によって、カベオラ密集領域の指標となるCaveolin(カベオリン)-1とRyanodine receptor(リアノジン レセプター)が共局在し、その局在様式は筋形質膜に沿って断続的に観察され、収縮装置膜連結部位(デンスプラーク)に局在するPlectin(プレクチン)とは相補的位置関係であることを発見した。前年において、カベオリン-1にCalreticulin(カルレティクリン)とCa-ATPaseが共局在していることを突き止めているので、平滑筋組織におけるCa貯蔵ストアーの部位はカベオラ密集領域に依存しているという仮説が濃厚となった。 2)筆者が開発した光顕・電顕相関観察法を用い、レーザー顕微鏡観察像と電子顕微鏡観察像を重ね合わせた結果、Caストアーの構成タンパク質のひとつであるCa-ATPaseはカベオラ密集領域に限局し、プレクチンが限局するデンスプラークには存在しないことが確認された。このことから、Ca-ATPaseの他、リアノジンレセプターとカルレティクリンもカベオラ密集領域に限局していると判断される。内膜系が形質膜と融合した膜様式は、現在のところ、平滑筋組織独特の特徴であり、今回突き止めた事実は生理的・薬理的作用機序に多大な影響があると予想される。今後、Ca作用薬の影響によるカベオラの動態を相関観察法を含め、明らかにしていく予定である。 3)2)における相関観察の結果、ミオシンの太いフィラメントがカベオラ密集領域に近接していることが確認されたので、平滑筋ミオシン抗体、ミオシン軽鎖キナーゼ抗体を用い、レーザー顕微鏡観察を行なったところ、平滑筋ミオシンは膜付近ではカベオラ密集領域に限局していた。ミオシン軽鎖キナーゼも同様であったが、細胞内においてはミオシンが分布する以外の領域にも点在していたので、骨格筋Z板に相当するデンスボディーとの独自の局在様式が示唆された。Ca調節機構の収縮タンパク質に対して機能分化した構造様式であるカベオラがどのように関連するかも今後の課題である。
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