プロスタグランジン(PG) F_<2α>は血管組織における主要なアラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ代謝物のひとつであり、血管平滑筋細胞や心筋細胞を肥大させることが知られている。PGF_<2α>の血管平滑筋肥大作用のメカニズムを解明する目的で、血管平滑筋細胞の増殖や肥大を引き起こすと考えられている活性酸素種の関与について検討を行った。ラット血管平滑筋細胞株A7r5細胞において、PGF_<2α>やPGF受容体アゴニストのfluprostenolはスーパーオキシドの産生を有意に増加させた。このスーパーオキシドの産生増加は、スーパーオキシド産生酵素であるNADPHオキシダーゼの阻害剤・diphenyleneiodonium (DPI)により有意に抑制された。PGF_<2α>やfluprostenolはA7r5細胞の蛋白合成量を増加させたが、DPIはその増加を有意に抑制した。PGF_<2α>はNADPHオキシダーゼの触媒サブユニットのひとつであるNOX1のmRNAレベルを増加させたが、NOX4や他のサブユニットであるp22phoxの発現量は変化させなかった。NOX1 mRNAを特異的に切断するリボザイムを作製してA7r5細胞に導入し、リボザイムを安定に発現する細胞クローンを樹立した。リボザイム発現細胞ではNOX1 mRNAレベルが有意に低下しており、PGF_<2α>で剌激した際のスーパーオキシド産生増加と蛋白合成増加が有意に抑制されていた。以上の結果、PGF_<2α>による血管平滑筋細胞肥大には、NOX1の発現上昇とそれに伴うスーパーオキシドの産生亢進が関与することが明らかとなった。
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