NADPHオキシダーゼは血管組織における主要な活性酸素産生酵素である。申請者らはプロスタグランジン(PG)F_<2α>による血管平滑筋細胞の肥大には、NADPHオキシダーゼの触媒サブユニットのひとつであるNOX1の発現誘導とそれによって産生される活性酸素が必須であることを見出した。さらに転写因子ATF-1がPGF_<2α>、PDGF、FBS、ホルボールエステルによるNOX1の発現誘導に必須であることを明らかにした。アンギオテンシンIIによる血管平滑筋細胞の肥大にEGF受容体のトランスアクティベーションが関与することから、NOX1の発現誘導へのEGF受容体の関与を検討した。PGF_<2α>とPDGFはEGF受容体のリン酸化を引き起こした。すなわちPGF_<2α>とPDGFはEGF受容体のトランスアクティベーションを引き起こした。またEGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害するTyrphostin AG1478は、PGF_<2α>によるNOX1の発現誘導を抑制した。PGF_<2α>はERK1/2のリン酸化を引き起こした。このリン酸化はTyrphostin AG1478により抑制された。またMEK-ERK系の阻害剤PD98059はPGF_<2α>によるNOX1の発現誘導を抑制した。PGF_<2α>はPI3キナーゼの基質であるAktのリン酸化を引き起こした。このリン酸化はTyrphostin AG1478により抑制された。またPI3キナーゼ阻害剤はPGF_<2α>によるATF-1のリン酸化とNOX1の発現誘導を抑制した。以上のことからNOX1の発現誘導には、EGF受容体のトランスアクティベーションとそれに引き続いて起こるMEK-ERK系とPI3キナーゼ-ATF-1系の活性化が関与することが明らかになった。
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