アクチン細胞骨格制御蛋白質は、細胞の癌化に密接に関与している。出芽酵母Bni1はフォルミンファミリーの蛋白質で、低分子量GTP結合蛋白質Rhoファミリーの標的蛋白質としてアクチンフィラメントの形成に関与している。Bni1と遺伝学的相互作用を示す蛋白質を探索したところ、RhoファミリーCdc42の標的蛋白質であり、PAKファミリーであるCla4を同定することに成功した。Bni1とCla4との遺伝学的相互作用の生理的意義を解明するために、温度感受性増殖を示すbni1 cla4二重変異株を作製し、その表現型を解析した。bni1 cla4二重変異株は出芽に必要不可欠なセプチンリングの形成に異常を示した。アクチンアセンブリー不能なbni1変異とcla4欠失変異の二重変異体も同様の異常を示したので、Bni1のアクチンアセンブリー活性がセプチンリング形成に関与していると考えられた。Bni1のアクチンアセンブリー活性はアクチンケーブル形成に必要不可欠である。V型ミオシンであるMyo2はアクチンケーブル上を移動し、極性成長に必要な物質を運搬する。myo2 cla4二重変異株もセプチンリングの形成に異常を示したので、アクチンケーブルを介した物質の運搬がセプチンリングの形成に関与していると考えられた。 一方、cla4変異は活性型Cdc42の増加を引き起こすことが知られている。bni1変異体にドミナントアクティブCdc42を発現させたところ、セプチンリングの形成に異常が見られた。また、Cdc42のGTPase-activating protein (GAP)の過剰発現が、bni1 cla4二重変異による増殖阻害を抑圧することも明らかになった。したがって、Cdc42の活性制御がセプチンリングの形成に重要であると考えられた。 これらの結果をもとに、フォルミンとPAKによる細胞骨格の制御機構をさらに解析することにより、細胞癌化の一端を解明できると考えている。以上のように、平成16年度の研究計画はほぼ達成されたと考えられる。
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