種々の慢性炎症に重要な役割を果たすTh1細胞の組織遊走過程、血管内皮透過過程を詳細に解析するために、試験管内においてマウス由来の均一な抗原特異的Th1細胞株を樹立し、マウス血管内皮細胞株F-2を用いた再現性のある経内皮透過実験系を確立した。この実験系を用いた解析により、Th1細胞はケモカイン刺激に依存しない経内皮透過能があり、この活性がTh1細胞優位な組織浸潤の悪循環を引き起している可能性を示した。また、Th1細胞細胞が発現するLFA-1やCD44といった接着分子を介した血管内皮細胞への接着が重要であり、特に細胞表面のCD44分子架橋刺激がTh1細胞形態を大きく変化させ、細胞遊走を誘導していることが明らかになった。Th1細胞に対する種々の薬剤処理により、この過程にはPI3K、PLC、SrcPTK等のシグナル伝達分子が関与し、アクチン細胞骨格の再編を引き起すことが示唆された。さらに、CD44分子架橋刺激は、特に細胞極性が際立った特有の細胞伸長変化をもたらし、実際の血管内皮透過におけるTh1細胞の遊走にも細胞極性の形成が極めて重要な過程であることがはっきりした。現在、Th1細胞への安定遺伝子導入系の構築を進め、この極性形成機構を明らかにしようとしている。
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