研究概要 |
1、SF2-GFP融合蛋白質の安定発現細胞株を用いた実験系で、キナーゼ阻害剤に加え、熱ショックおよび紫外線照射のストレスによってもSF2の核内凝集を可逆的に起こすことが新たに判明した。免疫細胞染色法により、内在性のSF2も熱ショック、紫外線照射によって同様の凝集が観察された。そこで、比較的細胞障害の少ない熱ショックによるストレス誘導系を用いて、熱ショック処理が選択的スプライシングに及ぼす影響をアデノウイルス由来E1Aを基質としてRT-PCR法により検討した。その結果、熱ショックはSF2依存的なスプライシング産物の減少と、SF2非依存的な産物の増加を引き起こした。ここで、熱ショックによって、構成的スプライシングへの影響はみられなかった。 2、熱ショック処理前後のヒト線維肉腫由来HT1080細胞から核抽出液を調製し、抗SF2抗体を用いたイムノブロット法にて内在性SF2蛋白質を検出した。未処理の核抽出液中では主に3本のバンド(30kDa,33kDa,35kDa)が認められ、移動度の小さい35kDaと33kDaが30kDaに比べて量的に多く存在する。35kDaと33kDaはSF2のC末端に存在するSRドメインのリン酸化に由来するとされている。一方で、熱ショック処理後の核抽出液中では、SF2の総量に顕著な違いは認められないが、35kDaと33kDaが減少し30kDaのバンドが多く検出された。この結果から、熱ショックによるSF2依存的な選択的スプライシングの変化にSF2の脱リン酸化の関与が考えられた。 3、熱ショック処理によるSF2の凝集に必要な内部領域を検討した結果、1番目と2番目のRNA結合ドメイン間のヒンジ領域の一部(aa 107-121)から2番目のRNA結合ドメイン(aa 122-198)までの領域(aa 107-198)が必要であることが明らかになった。
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