研究概要 |
骨髄間質細胞による造血微小環境統御の分子メカニズムを解明することを目的として、本年度においては、ヒト骨髄間質細胞株LP101から産生される分化誘導因子の分離・同定を試みた。 1.顆粒球・単球系前駆細胞株HL-60に対する分化誘導作用を指標にして、骨髄間質細胞株LP101の培養上清を分画した。分化誘導活性は、主としてHL-60におけるCD11bの発現量をフローサイトメトリーにより測定した。分画分子量1000のメンブレンを用いて限外濾過を行うことにより、分化誘導活性は、高分子量画分と低分子量画分の両方に分離された。高分子量画分は熱により失活するため、タンパク質性因子であり、低分子量画分は熱に耐性のため、非たんぱく質性因子であると考えられた。 2.LP101の培養上清中に、種々のサイトカインに対する中和抗体を添加し、HL-60に対する分化誘導活性に与える影響を検討した。その結果、TNF-alphaに対する中和抗体は分化誘導活性に対して強い抑制効果を示した。また、IL-6およびGM-CSFに対する中和抗体は弱い抑制効果を示したが、G-CSFおよびM-CSFに対する中和抗体は全く影響を与えなかった。さらに、TNF-alpha,IL-6,GM-CSFの組み換えタンパク質のHL-60に対する分化誘導活性を検討し、TNF-alphaによる強い分化誘導活性と、IL-6およびGM-CSFによる弱い分化誘導活性が確認された。したがって、上記の高分子量画分に含まれるタンパク質性因子は、主としてTNF-alphaであり、IL-6およびGM-CSFも含まれることが考えられた。 3.低分子量画分に関しては、カラムクロマトグラフィーによる分画を進行中である。
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