1.野生型ウイルムス腫瘍遺伝子(WT1)は肺癌組織において過剰発現している 非小細胞肺癌56例(腺癌41例、扁平上皮癌13例、大細胞癌2例)および小細胞肺癌6例におけるWT1遺伝子の発現をReal-time RT-PCR法および免疫染色法により解析し、WT1遺伝子がほとんどすべての症例で組織型に関わらず過剰発現していることを明らかにした。さらに非小細胞肺癌34例の癌組織より得たWT1ゲノムDNAをdirect sequencing法により解析し、すべての症例でWT1遺伝子は変異のない野生型であることを明らかにした。これらの結果は野生型WT1遺伝子が肺癌細胞において癌遺伝子様の機能を果たしていることを示唆する。また、われわれはこれまでにWT1遺伝子産物が免疫療法の標的分子になりうることを明らかにしているが、WT1遺伝子産物を標的とした免疫療法が肺癌治療の新しい戦略になりうる可能性を示している。 2.肺癌組織においてWT1遺伝子はisoformの比をほぼ一定に保って発現している WT1遺伝子には4種のisoformがあり、各々が異なった機能を持つ可能性が報告されている。われわれはWT1遺伝子mRNAの4種のisoformの発現比を決定する方法を確立し、肺癌組織において発現されるWT1遺伝子のisoformの発現比はほぼ一定であることを明らかにした。これらの結果はWT1遺伝子がisoformの比をほぼ一定に保って過剰発現していることが肺癌細胞において発癌遺伝子様機能を果たす上で重要であることを示唆している。これらの結果に基いて、われわれはWT1遺伝子の4種のisoformを高発現する細胞株を樹立し、これらを用いて4種のisoformそれぞれの機能を解析中である。
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