申請者の研究室ではこれまでに、冠状動脈硬化の破綻ruptureに直接関与すると考えられてしいるマトリックスメタロプロテアーゼ-12(MMP-12)の遺伝子をクローニングし、マクロファージ由来のMMP-12の発現とウサギ大動脈硬化との関係を明らかにしてきた。本研究の目的はマクロファージで特異的に発現するMMP-12トランスジェニックウサギを作成し、これらを用いて冠状動脈硬化プラークの破綻に及ぼすMMP-12の影響を検討することにある。また、MMP-12の過剰発現は大動脈瘤やリュウマチ関節炎、肺気腫の発病にも関与していることが示唆されており、MMP-12のトランスジェニックウサギモデルはこれらの病態モデルとしても有用であると思われる。そこで本研究では、マクロファージスカベンジャー受容体プロモーターを用いてマクロファージ特異的にMMP-12を過剰発現する発現ベクターを構築し、2羽のヒトMMP.12トランスジェニックウサギfounderの作製に成功した。ヒトMMP-12mRNAはトランスジェニックウサギのマクロファージで特異的に発現することをRT-PCRで確認した。マクロファージ由来ヒトMMP-12蛋白の分泌を確認するために、ウサギの肺胞マクロファージ並びに腹腔内マクロファージを無血清培地で24時間培養して培養上清を調製した。これらの培養上清を10%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動後抗ヒトMMP-12抗体でウェスタンブロットしたところ、トランスジェニックウサギのマクロファージからヒトMMP-12蛋白が分泌されていることが判明した。また、ザイモグラフィーによりマクロファージから分泌されたヒトMMP-12蛋白がβ-カゼインならにエラスチンを消化することを確認しており酵素活性を持つことが判明した。現在MMP-12トランスジェニックウサギの系統を確立しており、実験用に必要なF1を繁殖しているところである。
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