研究概要 |
我々は悪性リンパ腫の発生・進展機構の解明と新たな診断・治療の標的分子の同定を目的として、cDNAマイクロアレイを用いて悪性リンパ腫臨床検体の遺伝子発現プロファイル解析を行なった(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター中村祐輔教授らとの共同研究)。初期DLBCL(臨床病期IおよびII、局所限局型)6症例、進行期DLBCL(臨床病期IIIおよびIV、びまん侵襲型)9症例について約18,462種類の遺伝子での発現プロファイルをcDNAマイクロアレイを用いて解析した。2群間で有意に発現パターンの異なる遺伝子を統計学的手法を用いて抽出した。その結果、初期群と比較して進行期群において有意に発現が亢進している48個の遺伝子および減少している30個の遺伝子を同定した。進行期群において有意に発現が亢進している遺伝子としてはMOLPHOSPH1,RUVBL1,CHN2,PSA, CDC10等があり、進行期群において有意に発現が減少している遺伝子としては、COL1A2,COL4A1,FBLN5,CLECSF6,MIC2,CAV1,S100A10等が同定された。このなかの一部の遺伝子については、定量的Reverse-transcription(RT)-PCR (リアルタイムPCR)法および半定量的RT-PCR法により発現量の増減を検討し、再現性があったことから、マイクロアレイの結果が真に信頼できるものであることを確認した。cDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイル解析は、悪性リンパ腫の進展に関与する遺伝子群の同定に有用であり、同定された遺伝子およびその産物は、治療のための新たな標的となり得る可能性がある(Nishiu et al. Jpn J Cancer Res93,894-901,2002)。
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