悪性リンパ腫は、化学療法等により根治率が向上しているものの、治療に抵抗性で腫瘍の浸潤・転移により致死的経過をとる症例も少なくない。これまでに我々は、初期悪性リンパ腫と進行期悪性リンパ腫の腫瘍細胞における遺伝子発現解析をマイクロアレイを用いて行い、腫瘍の進展に関連すると考えられる遺伝子の同定を行ってきた(Nishiu et al.Jpn J Cancer Res.93:894-901(2002))。 その一環として、膿胸関連リンパ腫を遠隔転移を起こしにくいリンパ腫モデルとして用い、その遺伝子発現解析を行った。膿胸関連リンパ腫は形態学的にはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫分類されるが、通常のびまん性大細胞型B細胞型悪性リンパ腫と異なる臨床的特徴を示し、膿胸関連リンパ腫では腫瘍は胸腔内にとどまることが多く、死亡時おいても遠隔転移は比較的少ないことが知られている。 膿胸関連リンパ腫の腫瘍検体の遺伝子発現解析の結果、通常のびまん性大細胞型B細胞型悪性リンパ腫と比べて、膿胸関連リンパ腫においてIFITM1、IFI56、IFI16、IFI27などのインターフェロンによって発現が誘導される遺伝子群が非常に多く発現していることを発見した。また、膿胸関連リンパ腫由来細胞株においても、他のリンパ腫由来細胞株と比べて、これらの遺伝子は非常に多く発現していることがわかった(投稿準備中)。 インターフェロンに腫瘍細胞の増殖抑制効果があることは良く知られており、これらのインターフェロン下流遺伝子に細胞増殖を抑制する直接効果があるのかについて調べるため、現在リンパ球系細胞株を用いた解析を行っている。今後、リンパ球系細胞とくに膿胸関連リンパ腫由来細胞株を用いて解析を進めれば、悪性リンパ腫の進展および阻害機構の解明に向けて、有用なデータが得られると考えられる。
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