研究概要 |
これまで我々は日常の病理診断において鑑別の困難な腎腫瘍の鑑別診断に使用できるマーカー(vinculin, paxillinなど)の発見に関与してきた。また、通常型腎細胞癌では色素嫌性腎細胞癌や乳頭状腎細胞癌と比較し、VHLやFHIT geneのlocusのLOHが高頻度に出現することを証明した(Sukosd F, Kuroda N, et al.Cancer Res., 2003)。この事実は、3p14.2-25の連続的なLOHがVHLと他の証明されていない3p内の癌抑制遺伝子の両方のLOHを同時にきたす可能性を示唆しており、通常型腎細胞癌の発生をより一元的に理解するうえでこれまでにない画期的な報告となった。平成15年度には腎腫瘍の様々な組織型、とくに乳頭状腎細胞癌、肉腫様腎細胞癌、腎好酸性腺腫の臨床的、病理学的および分子生物学的(特に染色体異常を中心として)な側面をreview articlesにまとめ、今後のヒト腎癌研究の方向性について概説した(Kuroda N, et al.Histol.Histopathol., 2003)。また、これまでとは異なる組織型であるlow-grade tubular-mucinous renal neoplasmの神経内分泌への分化を免疫組織化学および電子顕微鏡の側面より証明し、新しい疾患概念の特徴をより鮮明に描き出すこととなった(Kuroda N, et al.Pathol Int., 2004)。さらに、多発性嚢胞腎より発生した集合管癌について報告した(Kuroda et al.Int J Surg Pathol., in press)。 現在、腎腫瘍の鑑別に使用できるCD57をはじめとする他のマーカーの同定を試みている。
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