当該疾患患者ゲノムライブラリーより単離した、マウス内在性レトロウイルスenv遺伝子と塩基レベルで相同性を有する染色体DNA断片10個のうち、これまでに5個の塩基配列を決定した。現在、決定した塩基配列中のOpen Reading Frameのうち、マウス内在性レトロウイルスenv遺伝子産物(gp70)とアミノ酸レベルで相同性を有するものを列挙し、真核細胞発現ベクターを用いて発現させることを試みている。 併行して、公的ヒトゲノム計画データベースを利用し、相同性検索により、マウス内在性レトロウイルスenv遺伝子産物(gp70)とアミノ酸レベルで相同性を有するOpen Reading Frameを複数列挙した。これらについても、PCR法にて当該疾患患者染色体DNAより単離し、真核細胞発現ベクターを用いて発現させていく予定である。 さらに、上記の方法で見出したヒト染色体DNA塩基配列を、既報告のウイルス遺伝子との相同性に基づいて大きく分類した。その結果、(1)マウス異種指向性内在性レトロウイルスenv遺伝子と相同性を有するもの、(2)ヘルペスウイルス構造遺伝子と相同性を有するもの、(3)ヒト内在性レトロウイルスHC2、以上3種類に分類できた。(1)、(2)については、現在のところ発見報告はなされておらず、新規のウイルス関連遺伝子である可能性が示唆された。また、(3)については、我々がマウス内在性レトロウイルスenv遺伝子との相同性に基づいて同定した領域は、発見者はenv櫃伝子とは見なさなかったことが判明した。すなわち、HC2はenv遺伝子欠損内在性レトロウイルスとして報告されていた。しかしながら、我々はHC2当該領域塩基配列をアミノ酸に翻訳したところ、(1)充分大きなOpen Reading Frameを同定できること、(2)各種マウスレトロウイルスenv遺伝子産物(gp70)に特徴的なシステイン残基の配置が保存されていること、(3)各種マウスレトロウイルスenv遺伝子産物(gp70)で高度に保存されている5アミノ酸配列に極めて近い配列が存在することを見出した。すなわち、(3)HC2についても実質的に新規の遺伝子発見と見なせる可能性が出てきた。 なお、本計画は近畿大学医学部遺伝子倫理委員会において、平成14年7月31日付けで承認を受けている.
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