研究概要 |
[目的]RasファミリーGタンパク質の一つ、Ral活性化の時空間情報を生きた細胞や個体で得るため、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer, FRET)の原理を利用したRalの活性化モニター分子を作製する。 [方法]我々の研究室で既に報告したRaichu-RasをモデルにN末からYFP、RalA、RalBP、CFP、および膜局在配列から成るモニター分子を作製した。このモニター分子Raichu-RalAを293T細胞へ発現させ、可溶化した細胞抽出液を用いて、蛍光光度計にてFRET効率を測定した。また、^<32>P正リン酸で標識することにより、Raichu-RalAとRalAに結合しているGTPとGDPの比を薄層クロマトグラフィーで定量化した。次にRaichu-RalAをCOS1細胞に発現させ、蛍光タイムラプス顕微鏡を用いて、細胞でのFRET効率を画像化し、EGF刺激によるRalA活性化の時間的、空間的情報について調べた。 [結果と考察]蛍光分光光度計によるアッセイの結果、FRET効率はRalAの活性型変異体、野生型、優勢不活性型変異体の順に大きかった。また、Raichu-RalAに結合しているGTP/GDP比は、RalAのそれとほぼ同じで、GEFに対する濃度依存性もほぼ一致した。従って、Raichu-RalAはRalAの活性化をモニターできることが確認された。COS1細胞とRaichu-RalAを用いたイメージングによると、EGFによって生じるラフリングの場において、FRET効率の上昇が確認され、RalAが活性化に関する時空間情報を初めて得ることに成功した。
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