本研究では、ヒト培養細胞を用いてp-nonylphenol (NP)がヒト生殖器官以外の組織に及ぼす影響について調べた。まず、様々な手技を確認するための予備実験として、ヒト胎児肺由来培養線維芽細胞(TIG-3)を用い、次にヒト成人由来培養皮膚微小血管内皮細胞[HMVEC (AD)](クラボウ)を用いた。【方法】上記細胞にNPを添加した時の、過酸化脂質量(コンフルエント状態の細胞)(NPが酵母細胞に酸化ストレス源となる旨報告がある)・増殖能(細胞播種後、24時間以内に2%血清添加培地に置換し48時間後の、増殖速度を落とした状態の細胞を使用)に及ぼす影響を調べた。対照として、17-βエストラジオール(E2)、溶媒として用いたエタノールをそれぞれ添加した群とNP添加群を比較した。【結果】ヒト胎児肺由来線維芽細胞TIG-3についてまず検討した。過酸化脂質量については、40μM NP曝露24時間後の細胞では(100μM NPやE2添加で細胞は死滅)、E2あるいはエタノール添加群に比し、有意に過酸化脂質量が増加した。10μMNPでは影響が無かった。次に10^<-1>〜10^<-6>μMの範囲でNPを添加した場合、対照群に比し、細胞増殖が促進される傾向にあった。そこで、生体内濃度に近いと考えられる10^<-3>μM E2を添加した上でさらに10^<-3>〜10^<-6>μMのNPを添加した場合の細胞増殖能について検討した。その結果、NPの増殖促進作用はE2存在下でより強くなる傾向にある事がわかった。成人由来HMVECについても、NP添加時の過酸化脂質量、増殖促進能について検討したが、胎児由来肺線維芽細胞で観察されたような結果は得られなかった。今後は、胎児由来HMVEC (NB)に及ぼすNPの影響について検討する必要があると考えている。
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