ピレスロイド剤抵抗性ネッタイイエカ(JPal-per系統)の抵抗性機構を解明する目的で、ピレスロイドの作用点であるナトリウムチャネルの構造解析を行った。すでに構造解析が行われた昆虫のナトリウムチャネルの構造をもとに縮重プライマーをデザインし、ネッタイイエカから調製したcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。その結果、約6000bpからなるナトリウムチャネル遺伝子の全長を明らかにした。これまでに多くの殺虫剤抵抗性昆虫で共通に見られるアミノ酸置換の有無を確認するためにこの遺伝子の一部を抵抗性系統で解析し、感受性系統と比較した。その結果、予想された位置のアミノ酸(ロイシン)がフェニルアラニンへと変化していることが分かった。さらに、複数のクローンについて解析を進めたところ、この典型的なアミノ酸置換はもたず、その近位に別のアミノ酸置換をもつハプロタイプが同一系統内に存在することがわかった。これらの遺伝子配列の相違を利用してそれぞれのハプロタイプをもつ個体の純化を試み、permethrinに対する感受性を測定したところ、大きな違いが認められなかった。したがって2つのアミノ酸置換は同等に薬剤親和性を低下させると推測された。今後の抵抗性分子診断法確立への足がかりになるとともに、作用点の殺虫剤結合領域の解明につながるものと考えられる。この他、東京都内数力所よりアカイエカとヒトスジシマカを採集し、殺虫試験に用いるためのコローニー化を行った。現在、各種殺虫剤の感受性を調査中である。
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