研究概要 |
Lactococcus lactis YIT2081株にClostridium perfringens, Salmonalla TypyhimuriumおよびBacteroides fragilis由来のノイラミニダーゼ遺伝子nanHを導入し、ノイラミニダーゼを産生する乳酸菌を作成した。これらのうち、最も培養上清中のノイラミニダーゼ活性が高かった菌株はC.perfringensのnanH遺伝子を導入したL.lactis YIT2081(pBCnanH1)であり、本菌株をマウスに経鼻投与すると抗原として用いた卵白アルブミンに対する糞便中の特異的IgA量がベクターコントロール群の3.4倍に上昇したことから、本菌株は粘膜アジュバントとして有用であると考えられた。しかしながら、経口接種した乳酸菌の腸管への定着率は極めて低いことが知られており、本年度はL.lactis YIT2081(pBCnanH1)の腸管への定着率を調べた。ノイラミニダーゼを産生するL.lactis YIT2081(pBCnanH1)と対照菌株であるL.lactis (pBE31)を10mlのMRS broth (Em 5ug/ml)で30℃16時間培養し、新鮮な5mlのMRS brothで再懸濁したものをそれぞれ7週齢の雄性ラット4匹に、1ml/匹の量を経口投与した。糞便は輸送用培地に採取したものを100倍と10,000倍に希釈し、TATAC(Em 20μg/ml)培地に塗布した。これを30℃で3日間培養し、コロニーを計数した。投与生菌数はL.lactis (pBE31)が1.0×10^9 CFU/ml、L.lactis YIT2081(pBCnanH1)が0.9×10^9 CFU/mlであった。各菌株の糞便中の生菌数測定の結果、両菌株とも投与8時間後までは全てのラットの糞便中から分離されたが、24時間以降では対照群の1個体にのみL.lactisが検出された。以上の結果より、ノイラミニダーゼ遺伝子の導入は、L.lactisの腸管への定着率に影響を及ぼさないことが明らかとなった。
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