1.α毒素によるヒツジ赤血球の溶血に関連する赤血球スフィンゴミエリン(SM)分子種の解明:α毒素処理、あるいは、未処理ヒツジ赤血球から脂質を抽出し、この粗脂質画分をケイ酸カラムクロマトグラフィーにより分画し、SM画分を得た。このSM画分についてHPLCを行ったところ、数本のピークに分画された。この結果から、ヒツジ赤血球のSMは、数種の異なる分子種より構成されることが明らかになった。また、HPLCで分画されたピークのうち、特定のピークが毒素処理で減少することから、α毒素は、ヒツジ赤血球膜中の特定のSMの分解を亢進することが判明した。現在、SM画分についてLC-MSを行い、α毒素処理により分解亢進する赤血球膜SMの分子種の特定中である。 2.α毒素によるヒツジ赤血球スフィンゴシンキナーゼの活性化機構の解析:百日咳毒素で予め処理したヒツジ赤血球ライセートをα毒素処理した時、百日咳毒素の処理濃度に依存してα毒素による赤血球膜SM分解、セラミド生成、そして、スフィンゴシン1-リン酸生成の亢進が阻止された。また、百日咳毒素は、α毒素の酵素活性を阻害しないことが判明した。これらの結果からα毒素は、ヒツジ赤血球膜中の百日咳毒素非感受性GTP結合タンパク質を介して赤血球膜SM分解の亢進を引き起こすと推察される。さらに、これらの結果は、α毒素によるヒツジ赤血球の溶血と血球膜SM代謝系の亢進によるスフィンゴシン1-リン酸合成の亢進の関連性を支持していると考えられる。
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