1.α毒素処理したヒツジ奉血球から脂質を抽出し、この脂質画分からシリカゲル60カラムを用いて単純脂質を除去した後、得られた脂質画分について、高速液体クロマトグラフィーにてスフィンゴミエリン(SM)を分画した。このSM画分を高分解能FAB-MS分析し、SM分子種を同定した結果、ヒツジ赤血球中にはC_<24:1>、及び、C_<16:0>の炭素鎖を有する2種のSM分子種の存在が明らかになった。そこで、C_<24:1>或いは、C_<16:0>セラミド処理赤血球に対するα毒素の影響を検討したところ、本毒素による溶血にC_<16:0>セラミドはほとんど添加効果が認められなかったが、C_<24:1>セラミドの場合、セラミド濃度に依存して毒素による溶血の亢進が認められた。これらの結果から、α毒素によるSM代謝系を介したヒツジ赤血球のhot-cold型溶血にはC_<24:1>の炭素鎖を有するSM、及び、セラミド代謝が深く関与すると推察された。 2.α毒素によるヒツジ赤血球ライセートのスフィンゴシン1-リン酸生成において、ボツリヌスC3酵素処理の影響を検討したところ、C3酵素の処理濃度に依存して本毒素によるスフィンゴシン1-リン酸生成が阻害されることが判明した。また、毒素によるセラミド生成に対するC3酵素の影響を検討すると、C3酵素の処理濃度に依存してセラミドの蓄積が認められた。これらC3酵素の効果は、熱処理不活化酵素を用いた場合には全く認められなかった。これらの結果から、α毒素によるヒツジ赤血球スフィンゴシンキナーゼの活性化は、低分子量Gタンパク質、rhoが関与することが明らかになった。
|