研究概要 |
一般にパラミクソウイルスの細胞融合はF蛋白とHN蛋白の総合作用によって誘導されるが、例外的にSV5(W3A株)のF蛋白は単独発現でも融合能を発揮する。我々はその単独での融合能がF2のN末端のアミノ酸(Pro-22)により規定される事を見い出し、同時にW3A株のF蛋白よりも強い融合能をもつ変異F蛋白(L22P)を作製した。さらに、このL22PとSV5のT1株のF蛋白とのキメラ解析により、F1のHeptad Repeat 1(HR1)領域にあるグルタミン酸(Glu-132)も融合能を決定する要素であることが判明した。 【結果】L22Pの132位のグルタミン酸をアスパラギン酸に改変した変異F蛋白(E132D)は単独でL22Pと同程度の細胞融合能を持っていた。しかし、132位をT1株の対応アミノ酸であるリジンに改変した変異F蛋白(E132K)は細胞融合がL22Pの約1/7となった。リジンと同じ塩基性アミノ酸であるアルギニンに改変した変異F蛋白(E132R)は細胞融合がL22Pの約1/9となった。また、132位を中性アミノ酸であるアラニンに改変した変異F蛋白も(E132A)も、細胞融合がL22Pの約1/3となった。これらの変異F蛋白の発現量はL22Pに比べE132D,E132A,E132Rで同程度、E132Kで約1/2であった。また、変異F蛋白質を免疫沈降し、cleavageを解析したが、全ての変異体に差異はなかった。 【考察】今回F1のHR1領域にある132位のアミノ酸を変異させて単独融合能を解析したが、132位のアミノ酸が酸性であると融合能が強く、塩基性や中性であると融合能が弱くなることから、単独細胞融合能には132位のアミノ酸が酸性であることが重要であると考えられる。
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