SV5のW3A株のF蛋白がHN蛋白非依存性に細胞融合誘導活性を示すことは以前より知られていた。この活性を持たないWR株のF蛋白のLeu-22をW3A株のF蛋白のPro-22に変えた変異F蛋白(L22P)が単独での細胞融合誘導能を示すことから、単独での細胞融合誘導能がW3A株のF2のN末端のアミノ酸(Pro-22)により規定されることを明らかにした。さらに、単独での細胞融合誘導能を持たないT1株のF蛋白とL22Pとのキメラ解析から、L22PのHR1領域にあるアミノ酸(Glu-132)の重要性が見出された。T1株のF蛋白の対応アミノ酸がLys-132であることから、L22Pの132位のアミノ酸の電荷が細胞融合誘導能に関わっている可能性が示唆された。そこで、L22PのGlu-132をLys-132に改変した変異F蛋白(E132K)をBHK細胞における発現系を用いて解析したところ、E132Kの細胞融合誘導能はL22Pの約33%であった。また、L22Pの132位のGluをArgに改変した変異F蛋白(E132R)、あるいはAlaに改変した変異F蛋白(E132A)、による細胞融合誘導能はそれぞれL22Pの約20%あるいは33%であったが、対照的に、Aspに改変した変異F蛋白(E132D)はL22Pと同程度の細胞融合誘導能を示した。この結果から、L22Pの単独での細胞融合誘導能には132位が酸性アミノ酸であることが重要であると考えられる。 近年、X線解析によりNDVのF蛋白の3次構造が明らかになった。我々はこの3次構造を参考にL22Pのコア構造の分子モデルを作製した。これを基に132位が塩基性アミノ酸である時に相互作用すると想定されるコア表面の酸性アミノ酸5個の変異解析を行ったところ、132位のアミノ酸と416位のアミノ酸との静電的な組み合わせがL22Pの細胞融合能に関わっていることを示唆する成績が得られ、現在、さらなる変異F蛋白を用いて、より詳しい解析を行なっている。
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