本年度は、まずγδ型T細胞受容体遺伝子に点変異を導入した。さらに、それらをJurkat細胞に導入し、IL-2の産生を指標にして抗原認識能におよぼす影響について検討した。また、可溶型T細胞受容体の産生に関しては大腸菌での発現系を確立した。 点変異導入に関しては、γδ型T細胞の割合の多い健常成人末梢血においてもっとも出現頻度の高いγ鎖およびδ鎖を選択し、そのぞれのcDNAをpEF-BOS発現ベクターに組み込んだ。そして、変異導入キットを用い定法により、γK108、γK109、δR51、δL97にアラニン置換あるいはセリン置換を行い、γK108A、γK109A、δR51A、δL97A、δ97Sを得た。さらに、それらを対となる野性型γ鎖あるいはδ鎖と組み合わせ、pST-NeoBマーカー遺伝子とともにTCRβ鎖欠損型Jurkat細胞にエレクトロポレーション法により導入した。細胞はGeneticinにより選択し、CD3からのシグナル伝達を確認後、ピロリン酸モノエステル、アルキルアミン、窒素含有型ビスホスフォネートによる刺激を行い、反応性をIL-2産生を指標にして行った。その結果、γK108A、δR51A、δL97A、δ97Sにおいて反応性の消失が観察された。このことから、非ペプチド性抗原の認識においては少なくともγK108、δR51、δL97の3つのアミノ酸残基が関わっていることが示唆された。 次に、可溶型T細胞受容体の調製に関しては、γ鎖およびδ鎖のcDNAをpLM1発現ベクターに組み込み、RBSを適宜変換後さらにレアーコドンを大腸菌型に変換し、約200mg/1の収率で両鎖をインクルージョンボディーとして産生する系を確立した。また、T細胞受容体のリフォールディングに関して、アルギニンベースの緩衝液でpH8.0が至適条件であることを確認した。
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