ヒトγδ型T細胞は、結核菌、マラリア原虫、大腸菌O157など病原性微生物の産生するピロリン酸モノエステル系化合物、プロテウスなど病原性細菌の産生するアルキルアミン系化合物、高カルシウム血症などの治療薬として知られる窒素含有型ビスホスホン酸系化合物などを認識して、様々なエフェクター作用を呈する。一般に、αβ型T細胞はMHCに拘束されたペプチド性抗原をαβ型T細胞受容体で認識するが、γδ型T細胞はMHC非依存的に非ペプチド性抗原を認識するため、その詳細な認識機構はほとんど明らかにされていない。今回、γδ型T細胞受容体にアラニン置換の点変異を行い、T細胞受容体陰性のJurkat細胞をトランスフォームし、変異γδ型T細胞受容体を発現する種々のJurkat細胞を樹立し、その反応性を詳細に解析した。また、それら変異型γδ型T細胞受容体を大腸菌で発現させ、結晶化を行うことにより、X線結晶構造解析のための準備を行った。変異実験に関しては、γK109、δR51、δL97をアラニン置換することにより、全ての非ペプチド性抗原に対する認識能が消失した。このことより、機能的にはこの3つのアミノ酸残基が非ペプチド性抗原認識に重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、γδ型T細胞受容体の結晶解析に関しては、γ鎖およびδ鎖を大腸菌で発現させ、それぞれの封入体を精製し、アルギニンベースの緩衝液でリフォールドした。さらに、PEGベースの緩衝液中で結晶化を行い、X線結晶解析のための準備を整えた。今後、機能と構造の相関関係を明らかにすることにより、γδ型T細胞による非ペプチド性抗原認識能を明らかにする予定である。
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