本研究はT細胞のプライミングにおけるCD154とCD40の相互作用が果たす役割を解明することを目的としており、特にCD40刺激による樹状細胞の細胞寿命の延長がナイーブT細胞の活性化にどのように影響を及ぼすかということに注目して解析を行っている。CD40刺激により樹状細胞内にはBcl-xLの発現が誘導され、この分子が樹状細胞の細胞寿命延長を担っている可能性が強いと考えられるが、本年度は、クラスII MHCのプロモーターを用いて樹状細胞内に常にBcl-xLが高発現しているようなトランスジェニックマウスの樹立を目指した。ファウンダーとしては4ライン得られ、これらのファウンダーマウスを正常C57BL/6マウスと交配し、その仔らの脾臓内B細胞(クラスII MHCを発現している)における導入遺伝子の発現をスクリーニングしたところ、1ラインにおいて、導入遺伝子の発現が見られた。発現量としては個体によるばらつきは見られたが、LPS刺激で誘導される程度の量のBcl-xLの発現が見られた。(またLPS刺激により発現量はさらに増加した。)B細胞のFasに対する感受性をFasLを発現した細胞を用いて解析した結果、トランスジェニックのB細胞は正常マウスのものと比べて(導入遺伝子の発現量が高いもの程)抵抗性が見られ、導入遺伝子が機能的であることが示された。このラインを現在まで5世代C57BL/6と交配してきたが、その間に得られたトランスジェニックマウスの骨髄細胞から樹状細胞を誘導し、樹状細胞内でのBcl-xLの発現を解析したところ、発現量はCD40刺激で誘導される場合に比べて低い傾向であったため、現在トランスジェニックマウス同士を交配してホモ接合体のマウスの取得を試みている。ホモ接合体が得られれば導入遺伝子の発現量を増加させられることが期待され、以降の解析はその条件下で行っていく予定である。
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