本研究では、CD154/CD40の相互作用がどのような機構でT細胞のプライミングに寄与しているかを解析するという目的の下、特にCD40刺激による樹状細胞の細胞寿命の延長という機能に焦点を当てて検討を行った。方法としてはCD40刺激により樹状細胞内に誘導されるBcl-xLに注目し、Bcl-xLを樹状細胞内に常に発現させるようなTgマウスを作製、解析することを目指したが、十分な発現量のファウンダーは現在まで得られなかった。しかし、スーパー抗原として知られるSEA(Staphylococcal Enterotoxin A)を用いた実験により、以下のことが明かとなった。 (1)SEAをマウスに腹腔に接種することにより、CD40やCD154を欠損したマウスにおいてもin vivoでT細胞を効率良くプライムすることができた。(2)CD40/CD154非依存的なin vivoでのT細胞活性化は、ある種のウイルス感染によるものを除けば初めての例であり、しかもウイルス感染の場合に必須であることが示されたTRANCE/RANKの経路にも非依存的であることが示唆された。(3)SEA投与により脾臓内抗原提示細胞(B細胞)のほとんどの上にCD40/CD154非依存的にB7.2の発現上昇が誘導されることが判明した。スーパー抗原の場合、接種した動物の脾臓においてはほとんどすべてのB細胞がco-stimulatory分子B7.2を高発現し、抗原も提示しているという状況が作られることになる。このことは、CD40/CD154の相互作用が抗原を提示している細胞の細胞寿命を特異的に延長し、リンパ組織内のT細胞領域において、抗原を提示し、かつco-stimulatory分子を高発現した細胞を一定時間以上かつ一定数以上維持することがT細胞のプライミングに重要であるという仮説を支持していると考えられる。
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