研究概要 |
T細胞の補助刺激受容体CD28とICOS (H4)は、T細胞反応の増強や、Th分化、T細胞依存性抗原に対する抗体産生、アレルギーや自己免疫疾患に関与している。ICOSの補助刺激能力を調べたところ、CD28の場合と比べてIFN-γ、IL-4、IL-10産生は同等に増強し、一方IL-2産生はきわめて弱いこと、細胞内ではPI-3K/Akt経路を強く活性化し、逆にJNK経路はあまり活性化しないことを見いだした(Arimura et al.,2002)。したがってICOSとCD28は一部、質的に異なるシグナルを供与することが明らかになった。PI3-K/Akt経路はCD28とICOSで共通であり、かつICOSで強く活性化されていたので、この分子に着目して実験を行った。レトロウイルスベクターを用いてAkt(野生型、活性型、不活性型)をCD4 T細胞に導入するとCD69やLFA-1の発現が上昇し、細胞は活性化状態にあった。AktはT細胞を活性化する能力があることが分かった.C57BL/6マウス由来CD4 T細胞、またはTh1に傾けたBALB/cのCD4 T細胞にAktを導入した場合はIFN-g産生の亢進とTh1への分化の促進が見られ、逆にBALB/cやTh2に傾けたC57BL/6のCD4 T細胞ではIL-4産生の亢進とTh2分化の促進が見られた。さらにBALB/c背景のIL-4 KOマウスのCD4 T細胞の場合ではIFN-g産生細胞が増加した。これらの結果より、AktによるTh分化の促進は第一義的にはマウスの遺伝的背景によって決定されているが、同時にサイトカイン環境によって調節されることが分かった(投稿準備中)。したがってAktはTh分化に対する中立的な増幅因子であることが明らかになった。今後は、CD28 KOマウスのCD4 T細胞に改変型のCD28や下流のシグナル分子を導入してCD28とICOSの機能ならびにその相違がもたされる機構について解析を進める予定である。
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