T細胞の補助刺激受容体CD28とICOS(H4)は、T細胞反応の増強やTh1/2分化、T細胞依存性抗原に対する抗体産生、アレルギーや自己免疫疾患に関与している。ICOSはCD28と比較してIFN-γ、IL-4、IL-10産生を同等に増強し、IL-2産生はきわめて弱いこと、細胞内ではPI3K/Akr経路を強く活性化し、逆にJNK経路の活性化は弱いことを見いだした(文献4)。したがってICOSとCD28は一部質的に異なるシグナルを供与することが明らかになった。つぎに活性化T細胞でのICOSの発現はBALB/cがC57BL/6よりも〜10倍高いことが分かり、これは一次刺激時のIL-4産生量に比例することが分かった。さらにこのIL-4産生の違いはIL-2を受け取ってそのシグナルを伝えられるか否かに原因があることを見いだした(文献3)。現在、IL-2シグナル伝達のマウス系統間の相違について解析中である。CD28やICOSはTh分化にも関与していることが知られている。PI3K/Akt経路は両者に共通であるが、特にICOSで強く活性化されていたので、この分子に着目してさらに実験を進めた。AktをCD4 T細胞に強制発現するとT細胞は活性化状態になった。同時にCD4 T細胞のTh分化をマウスの遺伝的背景やサイトカイン環境に沿って促進することが明らかになった。(文献1)。すなわちAkt自身は中立的なTh分化の増強因子であることが分かった。つぎの段階としてAkt1KOマウスやPI3Kp85αKOを用いていくつかの実験を試みた。しかしながらAkt1KOではAkt2やAkt3の存在によりAkt1の機能は代償されているようであり、PI3Kp85αKOではp50αによって代償されているようであり、機能異常は認められなかった。今後は、ICOSKOマウスやCD28KOマウスのCD4 T細胞に改変型のICOSやCD28、さらにシグナル分子を導入することで機能解析とシグナル伝達機序について解析を進める予定である。
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