研究概要 |
本研究の研究計画に対し,慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認を得たのち,研究を開始した.本年度は,曝露評価方法の確立と,ジクロロメタン曝露作業者における疫学調査の一部を実施した.(1)曝露評価方法の確立ジクロロメタン個人曝露,尿中ジクロロメタン測定法に加え,血液中ジクロロメタンおよびGSTT1系代謝産物であるホルムアルデヒド測定法の確立を行った.GC-MS法により,いずれも高感度に測定可能であった.また,GSTT1遺伝子多型に関するPCR分析条件の確立を行った.(2)ジクロロメタン曝露作業者における疫学調査(曝露評価,健康影響評価)計画書の記載に従って作業者一人一人からインフォームド・コンセントを得た後,ジクロロメタンの曝露濃度測定,血液中・尿中濃度測定,ホルムアルデヒドの血液中・尿中濃度測定,GSTT1遺伝子多型測定,血液中Hb-CO濃度測定,自覚症状調査を行った.今年度の調査参加者は39名で,そのうちGSTT1(+)が24名,(-)が15名であった.曝露濃度の経時変化を測定したところ,作業によっては許容濃度を2倍以上超える気中濃度になっていることが明らかになった(呼吸保護具着用).血液中ジクロロメタン濃度と尿中ジクロロメタン濃度とは,良い相関関係を示した(r=0.93).個人曝露濃度と生体内ジクロロメタン濃度との関係,およびGSTT1遺伝子多型をふまえた高濃度ジクロロメタン曝露と生体内ホルムアルデヒド濃度との関係については,呼吸保護具着用の有無など詳細な作業条件との関連をふまえ,かつさらに対象サンプル数を増やしてから評価を行う.
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