研究概要 |
平成14年は作業ごとの身体負荷と疲労自覚症状に関する実験的検討と介護作業のパターンを分析するための介護労働の予備実態調査を実施した. 平成14年度上半期に実験的検討が可能な代表的な介護作業を選定した.その結果,介護施設における介護者への聞き取り調査から,介護機器の使用の有無が疲労の蓄積に関係していることが注目されたため,移乗補助器具(天井吊り下げ型リフト:以下ホイスト)を用いたトイレへの移乗介助を実験的研究の対象とした.実験対象者は介護施設に介護者として勤務する男性6名とした.その結果,傾斜角度計,筋電計を用いた作業負荷の定量は可能であった.ホイストを利用した介助により,1)単位時間あたりの平均体幹傾斜角が減少し,2)最大筋力比も約半分程度に減少し,腰部への局所的な筋負担軽減効果がみとめられた.しかし,疲労自覚症状の時間的変化に関しては大きな差異は認められなかった.差異が認められなかった理由として,介護機器を使用するための手順が増え,作業単位が増加していた,標準的な使用方法で天井走行形リフトを用いると,通常の介助方法に比べ要する時間が約4倍になる,などが考えられた.今回の実験における負荷時間と負荷回数程度では,自覚症状に関して明らかな差異があるとはいえなかった. 平成14年度下半期には,現場実験的調査の結果から,より詳細な介護作業のパターン分析と,腰部への作業負荷を検討する必要があったため,ホームヘルプサービスに従事する12名の介護者の調査と,体幹傾斜度の測定を実施した.その結果,介護内容と個人の違いにより,平均の体幹傾斜角度がかなり相違した値として定量されてくることがわかった. 平成15年度は介護の特性と対象者,介護状況を加味して実際の作業に即した作業負荷の定量的計測と,結果の整理を試み,同時に負荷の蓄積と疲労自覚症の変化の相関性に関する検討が必要である.
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