本研究の目的は労働者から血液を採取しDNAを抽出して、遺伝子多型を分析し、次に対象者の健康診断時の年齢、既往歴、家族歴、生活習慣、身体計測値、血圧測定値、、および尿、血液の測定結果を追跡し、遺伝子多型が他の要因を考慮しても、高血圧及び肥満のリスクがあるか、pooled logistic regression analysisを用いて解析を行うこと、さらに遺伝子を組み合わせて同様の検討を行い、その相乗的な健康影響についても検討することである。本年度は、G蛋白β3サブユニット(C825T、A-350G)、セロトニン5-HT2受容体(A-1438G)、LDL関連蛋白(Q89R)の遺伝子多型の測定が終わり、解析中である。その他、G蛋白β3サブユニット(C1429T、G5177A)、LDL関連蛋白(A1330V)の遺伝子についても測定中である。C825Tについては、男性1459人、女性1192人において遺伝子多型を測定した。高血圧の基準を140/90以上または降圧剤内服とした場合、その頻度は男性では高血圧がCC=58、CT=135、TT=63、正常がCC=300、CT=614、TT=282で、女性では高血圧がCC=20、CT=36、TT=20で、正常がCC=274、CT=602、TT=217であった。また、肥満をBMI≧25kg/m^2とした場合、男性では肥満がCC=80、CT=162、TT=80、正常がCC=278、CT=588、TT=265、女性では肥満がCC=52、CT=91、TT=40、正常がCC=242、CT=549、TT=198であった。高血圧、肥満とも男女で遺伝子型、アレルの有意差は認められず、他の因子を考慮した多変量解析でも有意ではなく、これらの疾患にC825Tが関連している可能性が日本人では非常に低い事を明らかにしており、論文は1報が掲載され1報が受理されている。
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