研究概要 |
現在大都市においては公共空間として、地下、高層建築物等、多様な空間が創出されており。環境保健、大都市の安全維持・危機管理の点から、重要な空間として認識されてきている。そこで、(1)大都市における公共空間のなかで地下通路、地下鉄車両内を中心に空気中を浮遊するの細菌・真菌の動態(細菌数・真菌数、存在する主な細菌の種類、細菌数・真菌数の垂直分布、細菌数・真菌数の経時的変化・季節変化)を明らかにすること、(2)上記の公共空間において、病原性細菌,真菌のレベルを明らかにすること、(3)大都市公共空間に浮遊する細菌・真菌の動態に影響を与える要因を明らかにすることを目的として研究を行った。 大都市の公共地下通路、および地下鉄車両内において、気温、湿度、浮遊粒子状物質、空気中浮遊細菌・真菌の測定を行い、浮遊粒子状物質および空気中浮遊細菌・真菌の動態を明らかにした。病原性細菌の一指標と考えられる溶血性を示す細菌は血液寒天培地上で平均10%前後認められた。測定項目と空気中浮遊細菌・真菌との関連について解析を行い、粒径5.0μmの浮遊粒子状物質数と空気中浮遊細菌間に正の相関が認められることを明らかにした。空気中浮遊細菌の同定を行った結果、空気中の浮遊細菌はグラム陽性菌がやや優勢であると考えられ、属レベルでStaphylococcus属、Micrococcus属、Pseudomonas属等、10数種の存在が明らかとなった。病原性が示唆される黄色ブドウ球菌、連鎖球菌も同定された。真菌では、Aspergillus属、Cladosporium属、Penicillium属が優位であった。空中浮遊細菌・真菌数は、通行者、湿度、浮遊粉塵などの空間環境条件と明らかな関係のあることが示された。空中浮遊細菌の疾病リスクに関する文献調査を行った。現在公共空間における空中浮遊細菌に関する基準はなく、基準の設定が望まれる。
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