研究概要 |
本研究の目的は、老人保健事業の実施主体である市町村が、市民の自主的な健康管理ツールである「健康手帳」についてどのような対応を実施しているかを明らかにすることである。本年度は、全国市町村3,255における老人保健事業担当課に対して行われた郵送法による調査票をもとに、有効回答が得られた2,445市町村について分析を行った。 健康手帳の交付方法については、「市町村窓口」にて交付すると回答した市町村の割合が最も大きく総数の79.1%であった。健康手帳への記載機会については、「健康教育・健康相談」の実施時に記載すると回答した市町村の割合が最も大きく総数の68.7%であった。また、住民における健康手帳の活用は、「血圧の記録」として活用していると回答した市町村の割合が最も大きく総数の77.2%であった。また、健康手帳への記載機会、および健康手帳の活用についての実施割合は、市町村における65歳以上人口割合区分が大きいほど、有意に大きかった。高齢化が進行した市町村においては、人口当たり保健師数、および基本健康診査受診率が大きいことから、高齢者を対象とした保健事業の実績が大きいことが考えられる。保健事業の実績を通じて、市民による自主的な健康管理を支える基盤づくりが促進され、健康手帳の活用が積極的に行われていることが示唆された。 健康手帳の効果と考えられる項目としては、「自分で健康状態の変化がわかる」と回答した市町村の割合が最も大きく総数の89.1%であった。ついで「事業時に過去の状態がわかる」86.4%、「健康相談に活用できる」86.1%などであった。健康手帳の効果として考えられる7項目すべてに対して「とくに効果がある」あるいは「効果がある」と回答した市町村の割合は、健康手帳の交付方法についての回答項目数、健康手帳への記載機会についての回答項目数、および健康手帳の活用についての回答項目数と有意な関連がみられた。市町村における積極的な健康手帳の活用は、利用者である住民側の健康手帳に対する利用意識の向上を促進し、住民自らが行う健康手帳の有効活用へと繋がる可能性があると示唆された。
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