本研究の目的は、高齢者の壮年期における口腔保健行動に対する意識や実態および生活習慣を把握し、歯を喪失する要因を検討する事である。本研究は2年計画であり、今年度は2年目にあたり、データの入力、分析とまとめをして学会発表を行った。 分析対象者は、疾患名が脳梗塞と脳出血で外来通院中である60歳以上の患者で、認知機能に問題のない者96名であった。 現在の口腔保健行動および日常生活習慣の分析結果より、以下の4点が明らかになった。 1.現在歯数20本以上を有する者は、歯ブラシ以外に歯間清掃用具使用している者、定期的歯科医院受診をしている者が多かった。 2.現在歯数は年齢と共に特に80歳以上で減少していた。 3.咀嚼能力は現在歯数と関係しており、しかも義歯の状況が影響していた。 4.生活習慣は、健康にとって望ましい生活習慣を5つ以上持っている者は、23名(27.7%)であり、4つ以下の者は60名(72.3%)であった。健康な生活習慣を行えている者が少なかった。 さらに60歳世代46名を対象とし、壮年期(40歳代)と現在(60歳代)の口腔保健行動および日常生活習慣と現在歯数の分析結果より、以下の2点が明らかになった。 1.口腔保健行動については壮年期と現在ともに歯科医院定期受診をしている者の現在歯数が有意に高かった(p<0.01)。 2.生活習慣については健康習慣指数の高低と現在歯数の間には関連が認められなかった。 以上のことから、介護予防の面からも口腔に関する保健行動が取れるよう保健指導を行うことおよび、生活習慣改善の為に継続した保健指導を行うことが看護職の役割として考えられた。 8020運動および健康日本21の重要項目に「歯の健康」があがるなど口腔保健に関する取り組みは、高齢社会が進む現在、健康の保持増進に非常に重要である。虚弱者および在宅療養をしている者へ、寝たきり予防・介護予防の支援をする為に、口腔ケアに関する保健指導は重要と考えた。
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