研究概要 |
E県A市において過去に頸動脈超音波検査及び循環器検診を実施した追跡集団(男女計4,340人:40〜79歳)を対象として平均4.5年間追跡した結果、WHO/MONICAの診断基準に即して94例の循環器疾患発症を把握した。これらのcase群に対して、性・年齢をマッチさせたcontrol群を同一追跡集団内から1:2の割合で計188名抽出し、コホート内nested case-control studyの手法を用いてhs-CRP及びIL-6について解析を行った。尚、解析に際しては各炎症指標及びサイトカインを3分位に区分し、logistic regression analysisを用いて最下位を基準とする循環器疾患発症に対する相対危険度を算出した(調整因子:性・年齢、BMI、喫煙、収縮期血圧、中性脂肪、血糖値、食後時間)。その結果、hs-CRPでは最下位に比べ、最高位ではオッズ比が1.6倍と増加傾向を示した。一方で、IL-6についてはオッズ比が0.61倍と減少傾向を示した。 本3年間の研究により、hs-CRPは断面的解析による頸動脈用音波検査による動脈硬化及び循環器疾患リスクファクターとの関連を認めただけでなく、nested case-controlの手法を用いて虚血性循環器疾患発症との関連も示唆する結果が得られた。 一方でこれまでの本研究では、血管内皮で産生されるIL-6に対する血球側受容体の1つであるCD4/CD25(+)T cellが動脈硬化、特にプラーク等の隆起病変と正の関連を認め、IL-6受容体増加が動脈壁肥厚から粥状硬化等に至る経路の指標となる可能性を示唆する結果を得ていたが、今回、IL-6自体については環器疾患発症と負の関連が示唆されたことから、動脈硬化の終末像としての発症直前の段階では、他のcytokineによるIL-6産生を抑制させる機序の存在が示唆された。
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