C57BL系雄マウス36匹を3週齢で搬入後、体重および甘味識別閾値が均等となるように12匹ずつ3群に分けた。1群は正常体重群とし、不断給餌で飼育した。毎日摂取量を測定し、制限給餌群の給餌量を決定した。飼料は甘味覚への影響を減らす目的と、不断給餌で肥満させない目的で、AIN93M配合からシュークロース含量を減らしてセルロースパウダーを増加させた「AIN93M改」飼料を作製し使用した。なお、「AIN93M改」飼料のエネルギー含量は、AIN93M飼料の約1割減とした。1群は肥満群とし、「AIN93M改」飼料にバターを添加して「AIN93M改」飼料の約1.8倍のエネルギーを含む高脂肪飼料を不断給餌した。残りの1群は痩せ群とし、正常体重群の2割制限給餌を行った。痩せ群の飼料は、エネルギー含量が「AIN93M改」飼料と同程度で、糖・脂質以外の栄養素含有量を2割増にした。各群の平均体重に有意差が生じた時点で、甘味識別閾値検査を実施した。各群の閾値は、正常体重群は-2.0(log M)、痩せ群はそれよりも2段階低い-2.5(log M)、肥満群は正常体重群より5段階高い-0.75(log M)であった。当初、各群の半数を解剖して、血清中脂質濃度、血清中および大腿骨中亜鉛濃度、体内脂肪量を調べる計画であったが、同じ餌を与えても、体格が変化しやすい個体とそうでない個体が認められたため、肥満群と痩せ群の給餌を逆転させて、体格の変化と味覚の変化を観察するための飼育を継続中である。肥満群の平均体重が制限給餌によって正常体重群より有意に小さくなるとともに、痩せ群の平均体重が高脂肪飼料によって正常体重群より有意に大きくなった時点で、甘味識別閾値検査を行う。さらに解剖・分析を行い、飼料の異なる群間差および、同一飼料群内の個体差について検討する予定である。
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