昨年までの研究で、飼料組成や給餌方法の違いでマウスの体格を変化させた時、痩せ群の甘味閾値はコントロール群と比べて敏感になり、肥満群は逆に鈍感になることがわかった。さらに、肥満群における甘味閾値の鈍化の程度は、痩せ経験の有無で異なっており、このことと血糖値およびインスリン濃度との間に関係がある可能性が示唆された。本年度は、生まれつきの甘味閾値および甘味嗜好の違いと体格の変化との関連について、さらに、太りやすさと甘味閾値との関連について検討するため、遺伝的に一定の不均一さを持つICR系マウスを用いて実験を行った。実験1:搬入直後(5週齢)に行った味覚検査結果をもとに、甘味閾値が敏感、普通、鈍感の3群に分けて飼育し体重変動を調べた。飼育期間を通じて3群間に有意な体重差は認められなかったが、甘味閾値が鈍感な群は、体重増加率が他の2群と比べて有意に低かった。実験2:搬入直後の味覚検査結果をもとに、甘味嗜好が強い、普通、弱いの3群に分けて飼育し体重変動を調べた。飼育期間を通じて体重、体重増加率ともに、3群間に有意差は認められなかった。これらの実験結果をマウスの体重増加率が高い、普通、低いの3群に分けて分析した結果、体重増加率の高いマウスは、成長とともに甘味閾値が敏感になる傾向が認められた。また、糖・脂質代謝に関与する生化学検査値は、甘味閾値による3群、甘味嗜好による3群、体重増加率による3群のいずれの3群間にも有意差は認められなかった。生まれつき太りやすい体質のマウスは、成長とともに甘味閾値が敏感になることから、これらのマウスが太りやすい食餌を好むかを調べることとした。エネルギー量は同じで組成を変えた飼料によるカフェテリア実験では、体重と食餌の好みに有意差は認められず、食餌中のエネルギー量を変えたカフェテリア実験、甘味味覚の親仔の関連を調べる研究の必要性が示唆された。
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