研究概要 |
1.目的:職場健康診断時に自記入式身体症状質問紙とアメリカ精神医学会診断基準(DSM-IV)による簡易構造化面接を実施し、身体の自覚症状を調べることで大うつ病がスクリーニングできるか検討した。 2.方法:対象は某研究所の定期健康診断を受診した1,443人(男性991人、女性452人;平均年齢34歳)であった。身体症状は調査票を用いて、過去1週間ならびに1ヵ月の26個の身体症状の有無を健診前または健診中に回答してもらった。我々の先行研究などを参考にし、以下12個の身体症状を選んだ(疲労、頭痛、不眠、腰痛、腹痛、関節痛、めまい、胸のしめつけ、便秘、動悸、嘔気、息切れ)。週1回以上の自覚症状を「症状あり」とし、症状ありの合計を身体症状数とした(0-12)。大うつ病の診断はDSM-IVのPrimary Care and International Versionの診断基準に基づいて面接した。 3.結果:DSM-IV面接の結果、42人(2.9%)が大うつ病と診断された。主な身体症状は、疲労(24.5%)、頭痛(7.8%)、不眠(4.2%)、便秘(4.2%)、腰痛(4.1%)であった。身体症状数の平均(S. D.)は男性0.5(0.8)、女性0.8(1.2)となった。男女とも身体症状数が増加するにつれ、大うつ病の有病率も増加した。身体症状数に対し3つのcut-off points(1つ以上、2つ以上、4つ以上)を設定し、それぞれ大うつ病スクリーニングの感度、特異度を計算したところ、Receiver Operator Characteristic(ROC)曲線下面積は、男0.92、女0.81となった。 4.まとめと今後の課題:身体症状数は大うつ病をスクリーニングするための簡便で有用な指標であることが示唆された。次年度は、研究対象者を1年間追跡調査するとともに、うつの罹患率(1年有病率)と本スクリーニング能の関係について検討したい。
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